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産業医の選び方とは?3つのポイントと注意点をわかりやすく解説します
企業は、ある条件を満たすと産業医を選任しなければいけません。「産業医」という言葉に聞きなれないと、いまいちピンとこない方も多いでしょう。
産業医とは医者ですが、主治医とは仕事内容が違います。事業主として産業医について詳しく知っておかないと、実際選任するときにどのような人を選べばいいのか、またどんな目的で選ぶのか、がわからなくなります。そして適当に決めてしまうとあとあと後悔することになります。
また、自分の会社に産業医がいてもどんなことをしてくれるかを知らないと、従業員は気軽に利用できなくなります。
今回は企業にとって必要な産業医について、仕事内容や選任方法などわかりやすくお伝えしていくので、今後の参考にしてください。
産業医は具体的に何をしてくれるの?仕事内容と、主治医との違いとは
産業医とはいったいどのような存在なのでしょうか。産業医についての仕事内容や主治医とはどのように違うのか、産業医の必要性について解説していきます。
●産業医の職務内容
①衛生委員会への出席衛生委員会とは、常時50人以上の労働者がいる事業には設定が義務付けられています。衛生に関する調査審議と、事業者に意見を述べるという目的があります。
もうひとつ、安全委員会があります。政令で決められた特定の業種や規模ごとで設置が義務付けられています。
産業医は構成員として、月1~の会議に出席します。出席については規則ではありませんが、出席が望ましいと言われています。
②定期的な健康診断
労働者へ健康診断をおこない、結果によって指導やアドバイス、面談をします。また労働者からの面談の希望があれば受け付けます。
③労働者のストレスチェック対策、メンタルヘルスの面談
産業医はストレスチェックの実施者として企画、結果評価をすべておこないます。この結果によって、高ストレスで面談が必要な人にはアドバイスをします。ときには専門医への紹介もします。
③長時間労働者への面接
長時間労働者で疲労が見られる労働者に面接をします。本人への指導もしますが、状況によっては企業にも指導と、適切な処置をすることで労働環境を改善することにつなげます。
④休職・復職面談
休職希望者がでたとき、体調不良による遅刻や欠勤などが続く労働者へ、休職面談をおこないます。
また、休んでいて復職希望の社員がでたときは、復職面談をおこない、復職してもよいかの判断をします。体調の状況によっては復職にあたって、労働時間を短縮するなどの条件を設定します。
●産業医は主治医とは違います
体調不良なとき、体の一部が不調なときはかかりつけの医者や、近所の町医者へ行く方も多いです。このような医師と産業医はなにが違うのでしょうか。
・対象者
主治医の場合、不調のある患者のほうから来るという受け身です。
産業医は、健康であろうと不調であろうと関係なく、事業に従事している者の健康チェック管理をしていきます。
・契約者
主治医は、患者と主治医の契約です。
産業医は、企業との契約になります。
・治療方法
主治医は、患者を診察、薬の処方をします。
産業医は、診察、処方はしません。労働者の健康管理と指導です。
・立場
主治医は、患者の味方です。
産業医は、労働者と企業の中立な立場です。
●産業医は2種。専属と嘱託がいます
産業医は2種の勤務形態があります。
・専属産業医
その企業、専門の産業医です。一般的に週4くらい、1日3時間ほどの勤務です。
常時従業員が1000名以上、または特殊な職種で500名以上在籍している場合、専属産業医の選任義務があります。
・嘱託産業医
いくつか企業をかけもっていることが多いです。専属よりも勤務日数が少なく、月1、1日1~3時間のこともあります。
常に会社にいないため、企業が必要に応じて来てもらうかたちです。
●産業医を選任する意味
産業医は医者としての知識はもちろんですが、それ以上の臨床への専門知識が必要です。これにより、労働者への健康管理や指導もできるため、状況によっては企業へ職務や環境の改善を命じることができます。
その結果、心身ともに健康な状態を維持することができ、仕事へのパフォーマンスもあがるでしょう。昨今では、うつなどメンタルヘルスの健康障害が増えています。産業医の存在によって、不調者の仕事軽減や、労働環境の見直しで、労働者をサポートできます。
優秀な産業医を選任しよう。ポイントは3つ
産業医とは、医師である以上に専門知識を要します。医師ならだれでもできるわけではありません。医師としては有能でも、産業医として有能かどうかはまた別問題です。優秀な産業医とはどのような人なのか、ポイントで解説します。
・健康管理ができる
健康診断やメンタルヘルスチェックの診断結果によって適切なアドバイスや指導ができ、労働者の健康管理ができることが重要です。
・過重労働管理
労働者の長時間労働によって疲労が見られる者への面談をおこない改善方法、企業への労働環境への改善を命じることができなければいけません。
企業それぞれ状況が異なるため、各企業の運営方法によって個々のアドバイスが必要です。企業スタイルによっての対応ができるかが、産業医と求められる重要箇所です。
・メンタルヘルスができる人
面談は、労働者からの信用がないとできません。コミュニケーションが能力高く、明るく気さくに話ができる産業医でないと労働者も話ができません。決められたことをこなすのではなく、労働者はもちろん企業側の立場になって理解をしようとする心掛けがあるかが重要です。
以上のように、よい産業医とは受け身でなく、自分から発信できる、具体案を提案できる、そして人に寄り添える人です。
最適な産業医の見つけ方は4つ
産業医についてわかったところで、次はどこで見つけたらよいのかを説明します。産業医の見つけ方は主に4つです。それぞれメリット・デメリットがあるので注意してください。
●医師会からの紹介
医師会による産業医の紹介です。とくに都市部よりも地方地域のほうがメリットを感じます。企業の労働者が体調不良になったとき、地元の医師が産業医であると診察するときも安心です。地域密着の医師のほうが地元との結びつきが強いので、何かあったときもすぐ対応してくれるでしょう。
●知り合いからの紹介
知り合い経由だと、どのような産業医がよいかあらかじめ伝えられるため、信頼度は高くなります。紹介者もちきんとした人を紹介してくれる確率も高くなります。しかし、問題はいざ契約をしたら、企業とマッチしなかった場合、断りづらいところです。
●健康診断先からの紹介
健康保険センターや組合からの紹介です。最近ではここからの紹介も増えてきました。しかし、検診医としての仕事が忙しく、なかなか産業医として訪問してほしくても予定が合わないなど、こちらの要望に応えるのが難しい場合があります。
紹介会社には、多くの産業医が登録しています。紹介してもらって、マッチしなければ違う人へ変更してくれるといった融通がききます。こちらの要望もあらかじめ伝えることができるので、ニーズに応えてくれる産業医を紹介してもらえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。産業医について、仕事内容や役割がわかるとどのような産業医が必要かも自然と見えてくるのではないでしょうか。産業医は主治医とは違うため、よくいわれる名医が必ずしも産業医としても名医とは限りません。
産業医とは、企業にとってよいパートナーでなければいけません。ときには事業主に意見をするため、信頼関係も必要です。企業側のことを理解し、また労働者へのサポートもできるベストな産業医を選任してください。